自筆証書遺言と公正証書遺言(18)

   公正証書のよいところ③ 検認の手続き戸籍を取る

戸籍謄本を取り寄せるのに国内各地の市町村に及ぶ場合には簡単ではないというところまでだったね。そういう場合、電車に乗ってその市町村まで行くわけではないでしょう?
まさか! 郵便で取り寄せることになるんだな。もっとも近隣の市町村ならば、出向いた方が早いこともある。郵便を利用する場合には少々時間がかかるが便利だ。次のものを用意することになる。
 ①戸籍謄本の交付申請書、②手数料、③切手を貼った返信用の封筒、④運転免許証やパスポートなど写真付きの本人が確認できる書類のコピーも必要だ。
  な~るほど! それで? 
まず、戸籍謄本の交付申請書だが、各市町村によって形式が異なっている。だから、本来ならばその役所の申請用紙を用いるべきところであるが、必ずしもその用紙を使わなくても交付してもらえる。手持ちの便せんやレポート用紙を利用して、自分の住所、氏名、電話番号、取得する戸籍の使用目的、取得年月日を書く。次に、取りたい人の本籍、氏名、生年月日、取りたい戸籍の種類(謄本・抄本・除籍・改製原戸籍)、必要数、筆頭者が分かればそれも書く。そして更に、あなた自身と取得しようとする方とはどういう関係にあるかを書かなければならない。これが重要だ。
  なぜ取得する人との関係を書くことが大切なの?
前にも話したように、個人情報の保護のためだ。これは平成15年5月30日に施行された「個人情報の保護に関する法律」によって個人のプライバシーを守るということになったのだ。いま日本は様々な通信手段が発達して高度情報社会になってきた。これによって、個人情報の利用が著しく拡大してきたんだな。そうすると、個人が有している情報を他人が自由に取得して乱用してしまうといろいろと問題が発生することになる。だから自分の戸籍を取るのはいいとしても、他の人の戸籍を取るとなると簡単にはいかない。
例え兄弟姉妹でも、結婚して戸籍が別になっていると本人から委任状をもらわないと取ることができないね。だから、役所がその戸籍を取得可能かどうか見極めるためにも双方の関係を記載することが必要なんだな。
  確かに、いま役所や銀行、郵便局などでの本人確認はとても厳しくなっているね。戸籍を一つ取るのも大変なんだー。
そういうことだ。次に手数料を納めなければならない。これについては「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」で決められている。つまり、日本全国どこの市町村で取り寄せても同じ金額なのさ。
戸籍謄本・抄本については450円、除籍謄本・抄本については750円、改製原戸籍の謄本・抄本も750円だ。これらは1通の金額なので、2通・3通を取る場合には2倍・3倍することになる。
除籍謄本とか原戸籍謄本なんていう言葉が出て来たけど、これって何なの?
除籍謄本というのは、戸籍に記載されている人全員が結婚したり死亡したりして誰もいなくなってしまったため、除籍簿に写された戸籍のことを言うのさ。
改製原戸籍というのは法令等の改正により戸籍用紙の形式を変えたような場合に、書き換えるに当たっての基となった戸籍の事だ。これらについては80年間保存しなければならないことになっている。だから古い戸籍も取得できるというわけだな。
  郵便封筒の中に現金を入れてはいけないことになっているけど、いちいち現金書留郵便で送るわけ?
   「小為替」という便利なものがあるんだな。郵便局の窓口で購入して現金の代わりに同封するわけだが、これについては次回に話すことにしよう。

 

◆解説

   
  特別受益と寄与分(その4)


  前回は特別受益を持ち戻して相続財産を分割する場合の計算方法についてご説明しました。そこで、今回は贈与された財産の評価方法について説明してみることにいたします。
 これは特別受益の財産をどの時点で、どのような方法で評価するのかという基準時と方法論の問題です。つまり、財産は贈与時と相続時とで必ずしも同じ価値ということはありません。むしろ違っていることの方が多いでしょう。例えば、贈与の時には5,000万円していた土地が、バブル経済の後3,000万円になってしまったという場合など、その差が大きければ大きいほど不公平が生じることにもなるわけです。それを調整するために評価基準となる日を何時にするかということですが、一般的には相続開始の時とされています。つまり贈与時の金額を相続開始の時の価値に換算して行うということです。


    個々具体的に見ていきましょう。

   ①土地の評価  土地の評価には市町村の税務課で出されている固定資産評価額、国税庁で出している路線価、社会一般で売買される実勢価額の三つが代表的なものです。しかし、難しい条件が介在している土地については不動産鑑定士による鑑定評価で決める場合もあります。一般的には路線価で評価することが多く、家庭裁判所における調停などではこの方法が取り入れられています。

   ②建物の評価  同じ不動産でも土地と違い建物は年を経るごとに評価が減少していきます。よって、贈与時の価額を出してそれを相続時の価額に評価替えをすればよいでしょう。

   ③金銭の評価  贈与時と相続時の貨幣価値がそれほど違わない場合にはそのままの金額で評価すればよく、どうしても正確にということであれば、贈与時の金額を消費者物価指数にあてはめて換算すればよいでしょう。

   ④動産の評価  例えば、嫁入り道具などどう評価したらよいのか迷います。結局は贈与を受けた時の価額を相続時に評価替えすることになるでしょう。
また、価値の高い書画骨董類などは一般人には評価などできませんので、専門家の鑑定に委ねることになります。

  
 ⑤預貯金  銀行や郵便局(ゆうちょ銀行)に相続発生日の残高証明書を請求します。定期預金の場合には利息を含めた残高証明書を出してもらうようにしてください。

   ⑥株式、有価証券、ゴルフ会員権
  これらにつきましては、時価で評価することになります。とりわけ株式などはめまぐるしく相場が変動しますので、どの時点で評価するかによってその価額が大きく異なることになります。よって、相続税を申告する場合の評価は次の四つの株価の内、最も低い価額で行うことになっています。
     (1)相続があった日の終値。
     (2)相続があった月の
終値の月平均額。
     (3)相続があった月の前月の終値の月平均額。
     (4)相続があった月の前々月の終値の月平均額。
なぜこのような方法をとるかといいますと、相続が発生した日の終値だけで株式を評価することになりますと、その日の株価が低いところで落ち着いていればいいのですが、たまたま高騰してしまったという場合には損をすることになってしまいます。ですから、上記のなかの最安値をとることにしたのです。株価については証券会社に請求して調べてもらったり、税務署に資料が置いてありますのでそれで調べることができます。