自筆証書遺言と公正証書遺言(23)
危急時遺言 ④
前回は危急時遺言のお話しの途中までだったので、続きをお願いしま~す。 | |
了解です。それでは危急時遺言の作り方から説明することにしようかな。
相続人ではないけれども財産をもらう人のこと)。
る。 |
|
な~るほど! 一つひとつ見てみるとそれほど難しいことでもないんだな。 | |
確かにそういう意味から言えば、そういうことも言える。でもね、そう簡単にはいかないのさ。形式的には今話したことを守ればよいことになるが、問題は書き取る内容だ。 |
|
う~ん、複雑だね。要するに、人でも物でも、総てが特定できるように書かなければいけないということだね。 | |
そういうことだ。遺言者が生きていれば書かれている内容を確認することもできるが、遺言は書いた人が死亡した後に効力を生じるものだ。その時になって記載内容がはっきりしないということでは、どのように扱ってよいのかが分からない。とは言うものの、人の死に直面した状況の中で作成するわけだから、完ぺきなものを作ることなど不可能だ。 だから、そのような場面に遭遇したら、上記の作成要件を基に思い切ってやってみるしかないね。 それがその人の最期の意志に報いることにもなる。 |
◆解説
特別受益と寄与分(その9)
1. 寄与分制度の趣旨及び内容については、これまでの説明でご理解いただけたものと思います。
そこで今回は、寄与分を受ける相続人とそうでない相続人との間の調整方法はどのようにするのかについて解説することにいたします。
寄与分算定方式は、①先ず被相続人が相続開始の時に有していた財産(つまり遺産)の価値から、②共同相続人全員の合意で寄与分として認められた金額を差し引いたものを相続財産とみなして、③そのみなし相続財産を法定相続分、或いは遺言による指定相続分に当てはめて計算した金額に、④予め差し引いておいた寄与分を加算した金額をもって特別寄与分のあった人の相続分とするわけです。
それでは、具体的数字を当てはめて、計算例を示してみましょう。
2. ある人に相続が発生して、相続財産が6,000万円あり、相続人は妻・長男・次男・長女の4人であったとしましょう。これを法定相続分に従って単純に分割するという場合には、民法第900条によることになります。
①6,000万円×2分の1=3,000万円(妻の取得分)
②6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円(長男の取得分)
③6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円(次男の取得分)
④6,000万円×2分の1×3分の1=1,000万円(長女の取得分)
ところが、長男は父親と同居して家業を献身的に手伝って事業を拡大し、結果として父親の財産を大幅に伸ばしたことにより、1,500万円の寄与分を他の相続人が認めたとしましょう。
この場合には同法第900条と第904条の2により、寄与分を 加味して次のように計算します。
①6,000万円ー1,500万円=4,500万円(実際の相続財産6,000万円から寄与分の
1,500万円を差し引いたもの、これがみなし相続財産になります。)
②4,500万円×2分の1=2,250万円 (妻の取得分)
③4,500万円×2分の1×3分の1=750万円(次男の取得分)
④4,500万円×2分の1×3分の1=750万円(長女の取得分)
⑤4,500万円×2分の1×3分の1+1,500万円=2,250万円(長男の取得分。つまり法定相
続分50万円に1,500万円の寄与分を加算することによって算出した合計金額になるわけで
す。)