自筆証書遺言と公正証書遺言(1)

    自筆証書遺言とは

 みなさまこんにちは
私はさいたま市で「茂原行政書士事務所」を開設し、相続・遺言・成年後見を専門にお仕事をさせていただいている茂原英記(もはらひでき)と申します。
 これまで相続について飼いネコの ジュン と パパ の会話形式だけで書いてきましたがこのたび解説を入れて新しくリニューアルすることにいたしました。なるべく分かりやすく書くよう心がけたいと思いますのでこれからもよろしくお願いいたします。なお解説は自筆証書遺言と公正証書遺言(3)からとなります。

  パパさん、相続ってどんなこと?
 そうだねー、簡単に言うと、自分の財産を次の人に引き継ぐことだよ。リレーのバトンタッチのようなものかな。
  どんなふうに引き継ぐの?
   自分が思っているようにしたいなら、「遺言」を作っておくのがいいね。
  「遺言」って、死ぬ前に書くんでしょ? 縁起がよくないよ~。
   それは違うね。ジュンは「遺書」と「遺言」を間違えているんじゃないかな?
  エッ! 「遺書」と「遺言」は違うの? 同じかと思った。
   「遺書」というのは、自分の思いを書き連ねる私信だから、何を書いてもかまわないが、「遺言」は民法で決められた「法律行為」だから何か書いてあれば良いというものじゃないんだ。それに「遺書」は何歳でも書けるが、「遺言」は15歳になってから書いたものでないと有効と認められないんだな。
更にいうと、「遺言」は健康で元気なうちに書くべきものであり、そうすることが重要なのさ。決して縁起が悪いものではないんだよ。
   なんで、健康で元気なうちに「遺言」を書く必要があるの?
   それはとてもよい質問だね。 誰でも一般的に遺言は死ぬ前に書くものと誤解しているが、実はそうではないのさ。
元気のあるうちに作るのが一番いい。これについてはもう少し先に行ってから説明した方が理解しやすいので、その時に話すことにしよう。
  「遺言」って言うのだから、口で「このように分ける」と次の人に話しておけばいいんでしょう?
   ブッブッー! 残念でした。それではだめなんだな。法律で決められた方式があるのさ。それに従って
書かないと「遺言」として認められないんだよ。
  ヘェー! じゃあ、どういう風にしたらいいの?
   代表的な遺言には「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があるんだ。それでは、初めに「自筆証書遺言」について説明するね。
  な~んだか難しそう。わかりやすく話してね。 
   「自筆証書遺言」て言うのは、全文・氏名・日付を自分で書いて印鑑を押す。これだけでいいんだ。
   なーんだ、簡単なんだ~! これなら誰でも作れるね。
   ところがね、実はこれがとても難しいんだよ。
  難しいって、どうして?
   まず、どの財産を、誰に、どれだけわけるのかがはっきり、わかるように書かないといけない。つまり相続財産とそれを受け取る人とその配分割合などを特定しておくことが必要なんだ。だから、慣れていないとうまく書けないんだな。
   そのように書いてない遺言書はどうなるの?
  無効。つまり遺言としての価値がないことになるんだ。使えないんだよ。 
 そうなったらどうなるの?
   結局、「遺産分割協議」といって、相続人全員が話し合いで決めることになるのさ。
  話し合いで決めるんなら、いちばん民主的でいいんじゃない?
   民主的なんて、ジュンはすごい言葉を知ってるね。でもね、実はこれがまた問題なんだ。実際の遺産分割協議ではしばしば相続人の間で話し合いがまとまらず、紛争に発展することがあるからさ。それがもとで兄弟間が不仲になったなんていう例は世間で少なくないんだな。
   そんなこともあるんだ~!
   自筆証書遺言は自分で書かないといけない。タイプライターやパソコンで書いたものは無効となる。あくまでも、全文・
氏名・日付のすべてを自分で書く必要があるのさ。
  今の時代、ビデオ(録画)や、DVDがあるけど、そういうのに記録しておくのはどうなの? 
   残念ながら、それも無効だね。ついでに言うと、自分で書いたものなら、紙でなくても木の板でも広告の裏でもかまわないよ。また印鑑でなくても拇印でも良いという判例が出たんだ。しかし、やはり、便箋とかノートとかにボールペンやインクではっきりわかるように書いて、実印を押しておくほうが安心だね。
   ふーん! そうなんだ。自筆証書遺言は、その他どんな問題があるの?
   「紛失」や「改ざん」なんていうことが起こることもあるね。
  それってどういうこと。
   そのことについては次回に話すことにしよう。

 

 

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