自筆証書遺言と公正証書遺言(2)

    自筆証書遺言が見つかったら

相続は誰にでも必ず起こる大切な事柄です。しかし生前に関心を持ち対策を立てられる人はごくわずかというのが現実です。
 それは「相続が起これば家族の者が何とかしてくれる」という期待とともに、「自分の死については考えたくもない」という気
持ちが働くからであります。その結果、年間11万件という相続問題が家庭裁判所に持ち込まれることになるわけです。
(NHKテレビ「クローズアップ現代」報道)。
 この数を1年365日で割って、更に1日24時間で単純に計算してみますと、
なんと5分に1件という驚くべき割合になります。
 そうならないためにはどうすればよいか。
「転ばぬ先の杖」としてこの記事が皆様のお役に立てば筆者の喜びとするところであります。
 次回より ジュン と パパ の対話の後に解説を加えることにいたします

 今回は、「紛失」と「改ざん」と言うところからだったね。「紛失」というのは、遺言書が亡くなってしまうこと。「改ざん」というのは、内容が書き換えられてしまうことなのさ。遺言を書いて机の引き出しや書棚にしまっておいたものが、長年の間にどこに置いたか分からなくなってしまったり、その遺言書を誰かが勝手に書き換えて、自分に有利なように内容を変更してしまうことだってあるんだ。盗まれるということがないこともないんだよ。
  そんなこともあるの?
そうだね。残念ながら、そういうことも実際には起きることもあるのさ。とにかく自筆証書遺言は1通しかないので、紛失したり、盗まれてしまうと大変だね。
  そうしたらどうなるの。
遺言書がないのだから、遺産をどのように分けるか相続人全員で話し合うのさ。
  なんだか人間不信になってしまうな~
そういう場合でも、本人が元気なうちなら、もう1度書き直せば済むことだけどね。
  それ、どういうこと?。
遺言というのは後から書いたものの方が有効になるんだ。つまり、同じ人が内容の矛盾する二つの遺言を書いた場合でも、日付の新しい方が、古い日付のものより優先されるということさ。
  それなら安心だね。
でも、それはあくまでも本人が元気でいる間だけ出来ることで、相続が発生してからではやはり困るね。紛失しないためには家族に遺言書の保管場所を知らせておくとか、自分の信頼できる人に預けておくなどもよい方法だと思うよ。
  読まれてしまう心配はないの?
封筒にいれてノリ付けし、封印しておけば安心さ。誰かに預けておくことの良い点は相続が発生した場合に、すぐに遺言書の存在がわかることだね。中には遺言を書いたことを誰にも知らせてなかったために、亡くなって数年たってから、本の間から遺言書が発見されたなんて言うケースもあるんだな。
数年もたっていれば、遺産は話し合いで分けてしまっているのでしょう。その場合はどうするの?
   正式に言えば遺言書があるわけだから、その通りに分割し直さなければならない。しかし相続人全員が、もう済んでしまったことだからこのままでいいと言えばそこに落ち着くね。
   せっかく遺言を書いても、発見されないのでは、無いのと同じだね。その点、誰かに預けておけば安心できるというわけか。
  そうだね。それに、自筆証書の遺言書を預かっている人やそれを発見した人は、相続が発生した場合にその遺言書を「検認」してもらわないといけないんだな。 
 「検認」ってなに?
 家庭裁判所に持って行って「このような遺言書が確かにありました」と認めてもらう手続きさ。証拠を残しておいて、後から問題が起こらないようにするためなんだ。
 裁判所が認めてくれれば安心だね。
   ただねその遺言が有効か無効か、内容が正しいかどうかなんてことには触れないんだ。遺言書の形式や存在を確認して、改ざんなどを防止するために行うのさ。
   その「検認」というのはすぐにやってくれるの?
   いま、裁判所も忙しいので、1か月で出来れば早い方だな。2か月以上かかると見ておく方がいいね。
   大変だね。その間、遺産は分けられないの?
 その通りさ。その点、公正証書遺言の場合には検認の手続きは必要ないんだな。
   公正証書遺言はなぜ検認の手続きが必要ないの
   そのことについてはもう少し先に行ってから話すことにしよう。
 自筆証書遺言にはその他にどんな問題があるの
   そうだねー。相続人の中の誰かが「その遺言は、お父さんが書いた字ではない」とか「それを書いた時期には、お母さんは認知症が進んでいてとても遺言など書ける状態ではなかった」なんて発言すると、また面倒なことになるね。
   面倒なことになるってどういうこと?
   つまり、遺言は書いた本人が亡くなったときに効果が発生するものだから、本人はその真偽を証明することが出来ない。
当然、相続人同士でも確認できないってことさ。  詳しくは次回に話すことにしよう。